スピネル
Spinel


スピネル かつてはルビーやサファイアと混同された
原産地 マダガスカル、タンザニア、ベトナム
多種
属性 スピネル
硬度 8.00
屈折率 1.71 - 1.76
比重 3.54 - 3.63


スピネルは、かつてルビーやサファイアと間違えられていましたが、「詐欺師」ではなく「変装の達人」と言えるでしょう。宝石の世界の秘蔵の石ともいえるスピネルは、その色あせない輝きと華やかな色で珍重されています。色、希少性、歴史のどれをとっても魅力的なスピネルは、ジュエリーコレクションにぜひ加えていただきたい逸品です。

スピネルの名前の由来は、八面体の結晶の端がとがっているためにラテン語でトゲを意味する「スピナ」または、鮮やかな赤い色合いのために火花を意味するギリシャ語「スピンタリス」のどちらかだと言われています。


伝説

正体を誤解されていたために、スピネルには歴史上の記述がほとんどありません。しかし、スピネルは魔術師や錬金術師と不思議な関係があります。スピネルは「黒魔術師」たちが悪魔を呼ぶために使い、また彼らが火から身を守る魔よけとしても使われました。スピネルが持ち主の不利になるように使われることもあったのを物語る話があります。紙に包んだスピネルを持って近づいた時に、魔力をもっていると考えられる人が震えだしたら、有罪を宣告されたのです。

スピネルはジェムストーンの歴史の中では、ユニークなポジションにあります。1587年には別のジェムストーンだと認識されたにも関わらず、19世紀まではレッドスピネルの深い色合いは、ルビーと間違えられることがありました。色が似ていることと鉱床が非常に近かったため混同されたのです。1783年にはじめて、ロメ・ドゥ・リールがルビーとレッドスピネルの違いを科学的に明らかにしました。

レッドスピネルはルビーに似ていることから、偶然にも、バチカン、ロシア、イラン、イギリスの王家の宝石といった世界の名だたる宝石コレクションに多く収蔵されています。

興味深いことに、イギリスの王家に伝わる352カラットの伝説の「ティモールルビー」や170カラットの「黒太子のルビ ー」はいずれもレッドスピネルでした。

1415年のアジャンクールの戦いでは、イギリス王ヘンリー5世は「黒太子のルビー」をはじめとする宝石で装飾されたかぶとを着けていました。この戦いでフランス軍指揮官であったアランソン公爵がヘンリー5世の頭に戦斧で激しい一撃を加え、あやうく王は命を落とすところでした。驚いたことに、スピネルがその一撃を跳ね返し、ヘンリーは命拾いし、イギリス軍を不可能だと思われていた勝利に導いたのです。


スピネルについて

レッドスピネルの見た目がルビーに似ているという裏には、ルビーやサファイアを構成する鉱物であるコランダム鉱床の近くで採掘されるという事情があります。また、両者の深紅色の原因となっているのはクロムという成分です。今日では、スピネルはその屈折度で容易に判別できます。レッドスピネルは単屈折で、ルビーは複屈折なので、レッドスピネルの赤色はルビーのものよりまじりけがなく、より濃く見えます。


スピネルには、レッド、ブルー、ピンク、オレンジをはじめたくさんの鮮やかな色のものがあります。色が名前の最初についたものの他に、以下のような名前のスピネルがあります。


Almandine Spinel The violet variety of Spinel.
Balas Ruby This is an historical name for Spinel, which referred to the country of origin;

either Badakshan in Tajikistan or the Balaksh region of Sri Lanka.

Cobalt Blue Spinel Resembling fine Sapphires, these exceptional Blue Spinels from Sri Lanka and

Tanzania are colored by Cobalt. Regular Blue Spinel also hails from Tanzania and displays similar visual similarities to Sapphire,

particularly those from Montana, US.

Flame Spinel The orange-red variety of Spinel.
Gahnite or Gahnospinel Named after Swedish chemist L. G. Gahn, it is the rare greenish or bluish,

zinc-rich variety of Spinel.

Noble Red Spinel The Ruby red variety of Spinel that was historically mistaken for Ruby.
Rubicelle The yellow to orange variety of Spinel.



ルビーと同様に、スピネルは通常風化した大理石からできた沖積鉱床から採鉱されます。スピネルの産地はほんの一握りで、タジキスタン、スリランカ、マダガスカル、タンザニアの南東端部にあるトゥンドゥール、ベトナム中央部のルク・エン地域などに限られています。宝石愛好家には上質のレッドスピネルの産地としてビルマ(現ミャンマー)が昔から有名ですが、タンザニアのキリマンジャロ地方で新しく見つかった鉱床の方にシフトしつつあります。タンザニア産のレッドスピネルは、その美しい赤ときらめくような輝きが言葉では言い表せない程だと、評判が高まっています。


完全な八角形をした結晶は、カットされないでそのままジュエリーに使われることがあります。ビルマ人はこのジェムストーンのことを磨かれたスピリットという意味の「nat thwe」と呼んでいます。この「nat thwe」 は、ごく軽く研磨をかけられることもあります。 不純物のないスピネルは白ですが、混合物があるといろいろな色になります。どの色もジュエリーに使われますが、最も高価で人気なのがレッドスピネルです。カラーチェンジタイプもたまにあり、日光の下では明るい灰青色になり、キャンドルライトの下では明るい紫になります。 スタースピネルも、特にスリランカ産のものが知られています。同じ石でも、4条の星と6条の星が両方見えることがあります。スピネル・キャッツアイは極めてまれで、ほんの一握りの例しか見つかっていません。


価格の面ではルビーより手頃なスピネルですが、実は希少性はルビーより高いのです。宝石業界では「希少」であることは市場価格と入手しやすさに影響するため、諸刃の剣といえます。スピネルを採掘する業者にとっては残念なことですが、スピネルは自然界でも有数の美しい宝なのですから、他の皆にとってはすばらしいニュースです。


スピネルは力強い色と丈夫さを兼ね備えた、どんなジュエリーにも合うジェムストーンです。屈折率が高いので、カッティングが非常に重要で、カッティングの技術が輝きを左右します。ジェムスTVでカッティングを担当する経験豊かな職人は、それぞれの石の物理的な性質と個々の魅力を十分に考えています。 タンザニアはスピネルの産地としては最も新しく、新しく発見されたことで価格が急騰しています。タンザニアで最初にスピネルが発見されたのは東アフリカ、タンザニアのマヘンゲ地域にあるマトンボ近郊でしたが、2007年7月に目を見張るような発見がスピネル業界をひっくり返しました。わずか三ヶ月で、イパンコ(マヘンゲ)で大きな結晶がいくつか採掘され、中には52キログラムもあるものがあったのです。


この美しい花のような輝きを初めて目にしたとき、私たちは「アヤナ」と名づけることにしました。アヤナとはスワヒリ語で「美しい花」「野生の花」という意味です。スワヒリ語(現地語でキスワヒリ)はタンザニアの公用語です。